（1）海藻の採集
　海藻が最も多く生育し，生殖器官をつけている春が適している。
この頃は午前中に干潮となり採集しやすい。
　海藻は春に枯れ始め，夏になると親の体は流されてしまうものが多く，
夏に生えている海藻のほとんどは多年生のものである。秋に芽生えが始り，
冬に繁茂する。つまり，四季のサイクルが陸上植物とでは全く逆になっている。
　海藻を同定したり学術用の標本をつくるときは，岩についている基部が同定
の決め手となるものがあり，藻体全体を採集する。採集日と採集場所の記載が
ないと標本の価値がなくなるので記録しておく。
　海が荒れた後，海岸に海藻が打ち上げられ，深所に生える海藻や産地の異なる
流れ藻が採集できることがある。銚子では北海道産のカタペニフクロノリや南西
諸島産のヤバネモクなどが打ち上げられたことがある。
　採集した海藻は水気を切り，温度が上がらないようにして持ち帰る。

（2）保存
　なるべくその日に押し葉にしたいが，1，2日後であれば，洗わずにポリ袋に
空気を入れて口を縛り，冷蔵庫に保存する。長期間保存する場合は，海水か
水道水で砂やゴミ，付着動物を取り除いた後，ポリ袋に小分けして密封し，
冷凍する。

（3）塩抜き
　海藻を水洗した後，水道水に漬けておく。薄いものは数分，厚いものは10分程度。
ホンダワラ類は1昼夜水に漬けないと台紙にしみがついてしまうが，熱湯にしばらく
漬けた後，水洗すれば短時間で塩抜きができる。熱湯に漬けると褐色から緑色に変化
するが，仕上がりは水に漬けたものとほとんど変わりがない。塩抜きが不十分だと
湿気を帯びて押し葉にカビが生えたりする。

（4）緑藻の色止め
　クロロフィルは分解が速く，緑藻の押し葉は１ヶ月もたたないうちに黄色っぽく変色
してしまうことが多い。そこで，弱火で沸騰している０．１％硫酸銅水溶液の中に緑藻
を入れ，２〜３分煮る。その後水洗して押し葉にする。硫酸銅に含まれる銅がクロロ
フィル分子内のマグネシウムと置換されることで色止めができる。

（５）台紙
　ハガキ程度の厚みのある上質模造紙が一般的に用いられるが，ケント紙や画用紙で
もよいし，押し葉ハガキをつくるときはそのまま官製（私製）ハガキを用いる。
生徒にしおりなどをつくらせるときは，台紙に鉛筆で名前を書かせておく。

（６）海藻を台紙に広げる。
　バットに水を深めに張り，水の中に台紙を入れ，その上に海藻を広げる。
なるべく枝が重ならないようにピンセットやつま楊枝を使って広げる。
台紙からはみ出たり枝が重なり過ぎた部分ははさみで切る。
台紙が大きい場合は，下敷きの上に台紙をのせて作業する。


（７）吸取紙（新聞紙）にはさむ
　吸取紙がなくても新聞紙で代用できる。新聞紙は１枚ずつばらして，折りたたんでおく。
新聞紙２枚を敷き，その上に海藻がのった台紙を隙間なく並べる。
さらにその上に布（さらしなど），新聞紙２枚の順に重ねる。
これを繰り返して，最後に板をのせ，その上に重しをのせる。

（８）乾燥
　初日は新聞紙のぬれ具合を確認しながら取り替え，以後朝夕ごとに新聞紙を取り替える。
多量に押し葉をつくるときはダンボールの板ではさみ，ダンボールの目に向かって風を
送ると薄いものは１晩，厚いものでも２〜３日で乾燥する。アオサなどの薄いものは乾燥
し過ぎてひび割れが入ってしまうので，乾き具合いを点検する。


（９）仕上げ
　乾いたら布を丁寧にはがす。ほとんどの海藻は台紙に貼り付いているが，はがれていたら合
成糊で貼り付ける。しおりなどはラミネートしたりブックカバーを貼ると傷みも少なく，見た
目にもきれいに仕上がる。